もうひとつの黒歴史

生放送であまりにもリクエストが多いので投下します。
第一章 〜全ての始まり〜

 それは高校に入学して約二カ月がたった、ちょうど入学後初めて付き合った彼女と別れて約3日後の出来ごとだった。ホームルームが始まる前の教室がざわつく中、クラスでもbsで定評のあるIは俺におもむろに近づきこう言った。
「ねぇ、YU君のメアド知りたいって子がいるんだけどいいかな?」
高校に入ってたったの二カ月、人間の輪をできるだけ広げて楽しい高校生活を送ろうと目論んでいた俺に断る理由はなかったので「いいけど、誰・・」と振り向いたそこに存在したモノを見た瞬間、言葉を失った。
 あえて容姿を言葉で表すならば顔はメデューサ、頭はキノコおばけ、体は豚、肌色は馬である。とてもこの世のものとは思えなかった。
一度いいよと言ってしまった手前今さら断ることもできず、連絡先を教えてしまったのである。早速帰宅途中でメールが届いた。「今日はありがとう。私隣のクラスのNって言うの、よろしくね。」というたわいもない会話から始まり学校生活や休みの日のことなど適当に世間話に付き合った。ちょうど家に着いた頃だっただろうか、いきなりこんなメールが届く。
「ねぇ、今YU君って好きな子とか付き合ってる人いる・・?」「(゚д゚;)」
俺が一番心からなって欲しくなかった展開へ話が進んでしまった・・彼女と別れたばかりなのを知っていてこんなことを聞いているのは明らかだったので「この間彼女と別れちゃったから、今はいないよ」と正直に答えた。その次のメールである。
「あたし、実はYU君のこと初めて見たときから好きでした。考えてもらえますか??」
「ぁぁぁぁああああああああああああ」と叫びたかったがそこはぐっとこらえて「さすがに前の彼女のことふっきれたわけじゃないし、すぐには他の子と付き合うわけにはいかないからごめん」とできるだけ傷つけないように気を使って断った。(引きずっているなんてもちろん嘘。すぐに彼女欲しい状態なのは言うまでもない。)
 次の日、学校では昨日のHR前のできごとを見ていたクラスの友達と奴が相談した友達からすでにクラスで噂になっており「お前昨日大変だったんだってなー!」と皆大爆笑だった。俺も「そうなんだよ!超迷惑だったよ、はは!」と笑い飛ばした。放課後、テニス部で汗を流しているとふと変なものが視界に入った。「ん・・?なんだあれ」
 奴である。奴が傍らからこっちを見つめている。
背筋が凍りついた。そして奴はとうとう部活終了時まで待ち続けていたのだ。一緒の部活の仲間に相談したところ「わかった、俺達二人でお前をかくまってやるからあいつの前を一気に走り去ろうぜ」と協力してくれることになった。3人はNの目の前を一気に走りさり、学校の向かい側にあるコンビニに逃げ込んだ。「フーッ!うまくいったな!よし、なんか飲もうぜ」と飲み物を選んでいると後ろから
 ガーッ
という自動ドアが開く音がした。何故か背筋に冷たいものを感じた・・・その予感は的中したのである。
「YU君、ちょっといいかな・・・?」「・・・何?」「私が好きって言ったことYU君が迷惑がってるってIちゃんから聞きました。本当ですか?」
これはもうはっきりと言ってやるしかないか・・・「悪いんだけどさ・・君とは付き合えないよ」ときっぱりと言った次の瞬間、Nの目からはブワッと緑色の汁が流れ出た。初めて見る色だ。そして奴はコンビニから走り去っていった。そして帰宅しようと最寄駅に着いたとき奴はまたそこにいた。電車の方向は逆だったのだが何故かこっちのホームにいてこっちを睨んでいるような見つめているようなそんな眼差しで見ている。俺は気にせず電車が来るのを待ち、電車が来て乗りかけた瞬間Nは叫んだ。
「あとでメールするからあああああああああああああああああああ」
振り向くとまた緑色の汁を目から流している。ホームにいた人、駅員、電車の客皆の注目が一瞬に集まった。はたから見れば俺は女の子を泣かせた悪人で、乗換駅まで視線が痛かった。なんという迷惑。駅で乗り換えた頃本当にメールが届いた。そこには「どうして私と付き合えないと思ったの?」と書かれていた。「え?まじで言ってんのかwww」と送りたかったが我慢し、「昨日も言ったようにまだ彼女と別れたばっかりだしさ」とあくまでも優しく返した。しかし「でもそれって私に対する答えじゃないよね?ちゃんと私自身のことについて教えてよ!」としつこい。俺は「そんなこと知っても君が傷つくだけだから知らない方がいいよ」と気を使ったが「そんなこと言っても気になるよ!教えて!」と本当にしつこい。これはこれからのため、こいつのためにも俺のためにもはっきり言ってやらないといけないな・・・と思った。
俺「わかった・・そんなに知りたいならはっきり言うよ。俺さ、ブスは嫌いなんだ」
 次の日学校に皆の反応は予想通りだった。普通なら俺は悪人として扱われるところだろうが、「YU君!昨日あの子にブスは嫌いって断ったんでしょ!?すごいよね〜〜!」と皆大爆笑していた。奴を可愛そうと思う人間は一人もいなかったのである。
 しかしこれでは終わらない。これは全てのエピソードのほんの一部分に過ぎなかった。  第二章へ続く。